2006年07月21日

アニメ 涼宮ハルヒの憂鬱  Ask John

元ネタ Ask John 「What's John's Opinion of Suzumiya Haruhi?」

質問 : ”涼宮ハルヒの憂鬱”のジョンの評価は?

以前のコラムで、あなたは”涼宮ハルヒの憂鬱”が大ヒットしていると言及しました。そして、確かにアマゾンドットコムの日本サイトでは、そのエンディングテーマがCDシングル売上げ1位として登場しました。
TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」ED主題歌 ハレ晴レユカイ

しかしながら、あなたは「どれだけアニメ産業の創造力を高められる?」のコラムで、このアニメが市場に媚びたキャラクターで安っぽい仕掛けを利用していると述べていた。私が話した他のアニメファンの意見と似ています。
では一体何がこのアニメの成功に寄与したのでしょうか?


回答 ;

”涼宮ハルヒの憂鬱”のTVアニメシリーズは、日本で放映され始めてから3ヶ月で世界的なセンセーションと化した。このアニメへの関心の高まりは、秋葉原中の本屋で谷川流の原作小説が売る切れてしまう原因となった。キャッチーなエンディング曲のCDは、あっという間にベストセラー商品となり、エンディングアニメーションもストップモーション・ガンダム・アニメでパロディ化された。そして今、このアニメキャラクターを基にした、多数のファンにより描かれたパロディ同人誌が続出している。英語圏のアニメファンコミュニティでは、このアニメは熱い関心と崇拝の的だ。

このアニメへの私の個人的な反応は様々です。議論の余地も無くこのアニメは感動レベルのアニメーション品質と好ましいキャラクターを見せています。美術デザインと色彩は、明るくて魅力的です。オープニングとエンディングは共にずば抜けた作画で描かれ、視聴者を飽きさせない。エネルギッシュな雰囲気と多彩な登場人物は、このアニメを活き活きとさせ観る事を楽しくさせています。しかし、物語の中核の謎を維持する為に、視聴者には登場人物の思考や動機に対する洞察を極僅かしか与えられない。イルリバーシブル、モメント、パルプフィクションの様な時間軸を前後させる映画の物語の進展は、緊張を高めたり、知らせたい予備知識を視聴者に与えたりする為に、慎重に構成されています。ところが、このアニメではこれらの目的のどちらも達成されていません。登場人物達を紹介する前に、いきなり話の真ん中で視聴者が冗談を「得た」後に、新しい登場人物達を紹介する仕掛けは面白いのですが、シリーズが進んでいく内で、時間の流れを遡るエピソードは文字通り物語が後退している様に思えます。

一旦、登場人物の個性と相互関係が確立していれば、突然の時間の後退は単に気を散らされるだけではなく、明確な性格描写と相互関係から、表面的なモノに移るというのは、逆効果ではないかと感じます。序盤の出来事がシリーズ終盤で本当の意味を持つ様になるというのは、つかの間のひらめきを生みますが、混乱も生まれてしまいます。何故なら、このアニメは序盤の出来事が物語りの終盤で登場人物達と彼らの関係にどんな影響を及ばしたかについて説明できていないのです。支離滅裂なシナリオ構成の為、次々に明らかなになっていく物語の展開という感覚が欠如しています。それぞれのエピソードがカプセルに包まれている感じで、視聴者には登場人物達が進展していく感覚が決して得られない。私達は彼らが変わって行くのを見ていない。ただ、彼らが変わったのを見せられただけ。非常に劇的であるべき主要な出来事は孤立してしまい、結局無意味に感じられます。何故なら、それらが前後関係を無視して配置され、未来へのそれらの影響が決して説明されないのだから。視聴者に登場人物を紹介してから 登場人物達が重要な物事の本質が露呈する瞬間に遭遇している場面を表現して、登場人物達がどう反応し成長していくかを視聴者に見せてあげ、視聴者に登場人物達へ感情移入させてあげるのではなく、このアニメは物語の要素を視聴者へランダムに落としていくだけです。パズルのピースを組み立てる事は楽しいかもしれませんが、その過程ではどんな発見、共感、驚きといった感覚も排除されてしまいます。

さらに、涼宮ハルヒは小泉イツキの事を謎の転校生というステレオタイプに決め付けるが、そもそもこのアニメの全てのメインキャラクターは多かれ少なかれステレオタイプなのだ。ハルヒは私達がこれまで見てきた、フルメタの千鳥かなめ、るろ剣の神谷薫、あずまんが大王の滝野トモなどの、気が短く積極的なヒロインだ。キョンは日常アニメの典型的な受身の男性主人公。彼はトゥーハートの藤田ヒロユキ、ラムネの友坂ケンジに似ている。ユキはナデシコのルリ、エヴァの綾波、ハピレスの如月ニノマイ風味の内向的なロボ娘だ。朝比奈みくるは、藍より青しの水無月タエコ、まほろの安藤ミナワに良く似た、気が弱くて直ぐに恥ずかしがるドジっ娘だ。その登場人物達は面白くて愉快だが、目新しいものではない。

私はネタばれという危険を冒すつもりありませんが、シリーズ最終回が思いほのか常套的だったので、いささか期待はずれであり、いやむしろ、このアニメの主要テーマのひとつと矛盾すらしているのではと漠然と述べなければなりません。涼宮ハルヒが本当に望んでいたものが、実際には彼女が明確に欲しいと考えていたものでは無かったというのを知った時はちょっとガッカリしてしまいます。小泉がシリーズを通して予測している様な特定の驚異は不意に訪れたりしませんが、ハルヒの動機や欲望がシリーズを通してほんの僅かしか究明されないので、ラストの驚異は幾分ハルヒの柄に合ってない感じがします。

”涼宮ハルヒの憂鬱”がアニメのステレオタイプや出回っているパロディと同じくらい多くのお約束に依存しているにも関わらず、このアニメは上手くいっている。願望を満たしてくれるので、日本の視聴者はこのシリーズを楽しんだと私は聞いた。ハルヒやキョン、みくる、ユキ、イツキと共有する高校生活は、日本の視聴者が楽しみたかったと願う牧歌的で思いで深い青春時代なのだ。さらに、世界中の視聴者がハルヒと友達になりたいと願っていると私は想像できる、何故なら彼女は率直で外交的で、そのうえ現実ではお目にかかれないほど厚かましいのだから。キョンが気付くとしている不条理な状況への随時行う解説とハルヒの振る舞いは、エクセルサーガやマイアミガンズ、県立地球防衛軍、最終教師の様な喜劇アニメで長年使われていた手法への一種のパロディです。しかし、”涼宮ハルヒの憂鬱”では、視覚ネタよりはむしろ、対話によってそのパロディを伝えている。それは、それらをより明白に、一見画期的にしている。

”涼宮ハルヒの憂鬱”は、視聴者にウインクし何か珍しくて非凡な発見をした様な感じにさせる、エネルギッシュで鮮やかなアニメ番組です。
まさしく視聴者をSOS団の姿の見えない6人目のメンバーにしてしまう為、このアニメに巻き込まれもします。私は、このアニメが良くできていると思いますが、大傑作かどうかは個々の個人的趣向の問題です。登場人物に感情移入しているか共感したいと望む視聴者は、このアニメに容易に取り込まれていくでしょう。私の様な自分自身を登場人物に重ね合わせたりしない視聴者は、このアニメを客観的に観察しても楽しめますが、大傑作とはなりません。人気と品質は、必ずしも一致しないものです。 ”涼宮ハルヒの憂鬱”アニメシリーズの場合、その差は紙一重です。しかし、私は技術的に卓越した品質よりも、わずかに人気の方が高いと思うのです。私は”涼宮ハルヒの憂鬱”へのファンの反応は、アニメーションの技術的な特徴の批評よりも、視聴者がどう解釈をしてこのアニメを理解したかに基づいていると思います。そして、それはアニメに対する全く理にかなった反応です。

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涼宮ハルヒの憂鬱 1 通常版
谷川流

おすすめ平均
stars売れる理由がわかりました
stars平野アンチの概要
stars食わず嫌いはもったいない作品
stars素人にも面白いかな?
starsライトノベルならいいのだけど・・・(ネタバレ?)

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posted by えいち at 04:59 | 東京 ☀ | Comment(8) | TrackBack(0) | ANIME(アニメ)
この記事へのコメント
  1. 余計なおせっかいかもしれませんが
    ASK JHONネタは
    ここ↓とかぶってますよ。

    http://www4.ocn.ne.jp/~tmf00a/ASKJOHN.htm

    こっちのほうは本人に了解を得てやってたりしますし。
    Posted by 通りすがり at 2006年07月30日 15:22
  2. 何か問題があるんですか?
    そこの訳者が翻訳権を取得していたり、
    JOHN氏が了解無しの翻訳を禁止してるのならわかりますが…。

    あと、JHONではなくJOHNだと思います。
    Posted by Ofnir at 2006年08月08日 13:32
  3. ジョン妻が翻訳してないネタだから
    別に良いんでない?
    Posted by うほっ at 2006年08月10日 12:49
  4. とりあえず
    公式的な見解が出ているわけで

    >と、ここまで読まれた方の中には、こう思う人もいることでしょう。勝手に載せちゃっていいのか、と

    >いいんです。この子たちの父親からOKを貰いました

    >会社のものだからお金とかとっちゃだめだよ

    >社のウェブサイトにリンクははるんだよ

    そんなものは知らん
    著作権者など無視で勝手にやるサイトなんだと言うなら
    それはそれなんだろうけど
    Posted by 通りすがり at 2006年08月23日 05:12
  5. どうでもいいが、大して好きでないアニメが人気を博している時の攻撃性って、オタクに共通してるよな。
    Johnのこの記事もまさにソレw
    Posted by at 2007年12月16日 17:32
  6. この記事初めて読んだが、べつに攻撃性は感じないけどな。
    冷静、かつ的確だ。
    Posted by 通りすがり at 2008年04月13日 14:44
  7. よく分析してるわ
    確かに言ってることは間違っちゃいないと思う
    Posted by at 2008年12月26日 22:16
  8. これランダムか話順かでもちょっと評価かわりそうだけど、記事書いた人はどんな見かたしたんだろうね。
    Posted by at 2009年01月02日 19:07
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雑記ですから

08/03/22

ブログの参考にしてる面白い本ランキング。

1位
オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史
オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史
外人さんがアニメを中心とした日本のオタク文化を本にしたものは珍しくなく なってきましたが、その中でもこの本はダントツで理屈抜きに面白い。 何が良いって、著者のパトリック・マシアスが、アメリカで育った本物の ギークだって事に尽きる。子供の頃から、ゴジラやウルトラマンなどの特撮や バトル・オブ・プラネット(ガッチャマン)やスター・ブレーザーズ(宇宙戦艦 ヤマト)に夢中になり、アメリカのTV会社のいい加減さに翻弄されながらも、 オタクであり続けた記録が、微笑ましいやら楽しいやらで最高です。 内容にちょっと触れると、黒人やヒスパニックの危ないお兄さん達がドラゴン ボールのアニメTシャツを着てたりとか、リン・ミンメイにアメリカの少年たちが 「デカルチャー」しちゃったり、ガッチャマンのパンチラシーンで性に目覚め ちゃったり、ガンダムWでアメリカの十代の少女たちがヤオイに走ったりとか、 もう興味がない人にはどうでもいい話ばかりなんですが、ファンには溜まらない ネタのオンパレードで一気に最後まで読ませる魅力がある、というか魅力が溢れ まくってます。
自分が知る限り、彼以外のオタク本を書いてる外人さんは、アニメを楽しんでると いうよりも評論しているので、どうも上から目線の様に感じてしまいます。 スーザン・ネイピアさんの本を読んだ時も、そんな印象を受けましたよ。 日本を良く研究されていて、あ〜そういう考え方もあるのかあと、感心する一方、 彼女には、アニメに対しての答えが既に出ていて、その持論を補強するためのアニメ だけを例に挙げるので、ちょっとそれは違うんじゃないかと反発したくなる。 翻ってマシアスは、アニメを見る目線が自分とほぼ同じなので、共感できるんですよ。 ただ単純にアニメや漫画を楽しんで感じたままを書き連ねてる。学術的には価値が無い のかもしれませんが、自分にとっては凄く価値のある本だったりします。

2位
「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)
「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)
図書館で借り直してまた読んでみた。
やっぱり面白い。
地球の裏側にある全くの異文化で育った人の感想や考え方って、日本人には 想像できないような意外性があるし、普段は気にもしなかった事を指摘されると あ〜確かにそうだなと思わず納得させられる。 この作者のコリン・ジョイス氏のように10年以上日本で暮らし日本語がペラペラ になったイギリス人が、日本語の巧みな言い回しや表現・ユーモアに感心し楽しん でいると書いているのを読むと、単純に嬉しいし興味深い。 コリンさんは「猿も木から落ちる」という諺がかなり気に入った模様。 英語での「Nobody is perfect」なんて足元にも及ばないと言ってます。 この方は、ニューズウィーク日本版の記者を経て今はイギリスの高級日刊氏 テレグラフの東京特派員をしてるのですが、日本で「全米が泣いた」というフレーズ が流行った時は、それを記事にして送ろうとしたほど気に入ったそうです。 残念ながら、他の記者に先を越されてしまったようですが、まさか「全米が泣いた」 が既にイギリスで紹介されてるとは意外というか、そんな重要性が低い記事も 書いてるのかとちょっとビックリ。
他にも、プールに日本社会の縮図を見ちゃったり、美味しいけど味がどれも変わらない日本のビールにガッカリしたり、イギリスは紳士の国と言われて驚いたりと色々な面白エピソードが満載でした。 この面白さの半分でも見習いたんもんです。^^;

3位
中国動漫新人類 (NB online books)
中国動漫新人類 (NB online books)
目からウロコが落ちました。ボロボロって。 この本の趣旨の一つに「反日で暴れる中国人がどうして日本のアニメや漫画を楽し んでいるのか?」を考察するというものがあるんですが、正に自分が常々知りたいと 思っていた事なので、本当に楽しんで読めました。 著者は中国で生まれた日本人であり、大学で中国からの留学生を教えていたりもして るので、彼らの生の声を通訳など通さずにそのまま文章にされている所が魅力です。 スラムダンクが中国でもの凄いバスケブームを起こしたり、大人気のクレヨンしん ちゃんをパクッた中国アニメが中国人の小さな子供にも馬鹿にされてたりとかも 面白いネタだったんでが、コスプレイベントが中国の国家事業として企画されている という事実にビックリ。もちろん、何で反日教育をしてる中国政府が、日本アニメ 大好きの若者が日本のアニメキャラに扮するコスプレを自ら開催するのかという理由 も、著者なりに一つの解を示してくれています。他にもアメリカで起きた反日運動の 裏側など、アニメ以外の話題にも触れており読みごたえ十分な内容でした。 管理人同様、今の中国はどうなってんの?と思ってる人は是非読んでみて下さい。

4位
世界の日本人ジョーク集
世界の日本人ジョーク集 (中公新書ラクレ)
内容はタイトルのまんまで、世界中の日本人を扱ったジョークを集めて紹介しながら 著者の海外経験を通して海外の人が持つ日本人の印象や実態とは少し違う固定観念などを面白おかしく、時には真面目に語ってくれます。 著者はルーマニアに2年間在住しており、その時に「キネーズ(中国人)!」とほぼ 毎日声をかけられたそうです。親しくなったルーマニアの友人に、何故東洋人を見かけ ると中国人だと言うのかと聞くと、「あの豊かで優秀な日本人がこんなルーマニアなん かに来るわけがない。中国人に違いない。って思うんだよ。距離感が違いすぎるんだ。 日本はずっと上過ぎてね。」と言われたとか。リップサービスを差し引くとしても 他のルーマニア人にも同様の意見が多かったと述べてます。 何か読んでてこそばゆくなってきますが、こんなのもあります。 アメリカが日本人を動物に例えると何かというアンケートが実施されて、一番多かった 答えが「FOX(狐)」だったとか。どうやら「ずるい、ずる賢い」という意味だそうですが、狡猾・卑怯者ぐらいに思ってるのかもしれませんね。 真珠湾から安保のただ乗り(と向こうは思ってる)、湾岸戦争でのお金のみの貢献に 日米貿易摩擦あたりでこういう印象になってるそうです。 とまあ、こんな風にちょっと顔をしかめたくなるようネタも載ってます。
全体的には面白い内容のネタが多いし、巻末の辺りでは世界中で愛されるアニメや 漫画のジョークもあったりするので、ここの読者さんならかなり楽しめると思います。 この本が話題になった頃は、よく2ちゃんねるでもこの本に載ってるジョークがコピペ されてたので、あーこれがネタ元かあと膝を打つ人もいるでしょう。 単純な面白さで言うと前回紹介した「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート よりも上だと思う。まあジョーク集だから当たり前なんだけど。^^;

5位
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6位
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とにかく良い意味でも悪い意味でも心に残るネタが多かったです。 ビジネス書ではなくエッセイなので、そういう問題に対処する方法が詳細に書いて ある訳ではないですが、英国の負の部分を実体験に基づいて書かれた本は意外と 少ないと思うので、是非一読してみて下さい。

7位
僕、トーキョーの味方です アメリカ人哲学者が日本に魅せられる理由
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これで4回ぐらい読んだと思うけど、いつも読後に妙な気分になる。 面白かったーと喜んだり、何じゃこれと失望したりという激しい感情じゃなくて、 慣れ親しんだ東京の話のはずなのに、何か知らない別の街を題材にしたおとぎ話を 聞かされたような、まったりした感じ。 きっとこれが、哲学者だという著者のマイケル・ブロンコが書く文章の力だね。 普通の外人さんと違い、異文化に驚くだけで終わらず、そこに哲学者らしい解釈を ちょぴり詩的に加えてるのが印象的だった。 大袈裟に褒める訳でもなく、手厳しく批判するでもなく、彼独特の言い回しで東京 の一部を切り取ったエッセイの集合を、退屈と感じる人もいるかもしれないけど、 自分にとっては、味わった事のない感慨を与えくれる貴重な本です。 ま、そんな曖昧な紹介はこの辺にして内容に少し触れると、著者は宅配便の便利さ にいたく感銘した模様。ほとんど奇跡だとまで言ってます。^^ 日本人にしたら当たり前の事だけど海外では違うんですかね? 面白かったのは、やっぱりTシャツのなんちゃって英語は最初凄く気になったみたい ですよ。女性が胸の位置に「ロッキー山脈」とか「天国の門」とかプリントされた Tシャツを着てると思わず視線が胸に吸い込まれると言ってます。^^ まあこれは定番ネタですね。でも彼の場合は、呆れるだけで終わらずそこで哲学 しているのが売りです。

8位
クール・ジャパン 世界が買いたがる日本
クール・ジャパン 世界が買いたがる日本
これはもうタイトル勝ちというか、日本人なら思わず手に取りたくなるでしょ。^^ でも、ちゃんと中身も充実してますから問題無しです。 2年ほど前の本なので、内容に新鮮味は欠けてますが、ホンダが二足歩行ロボットを 創る際、法王に神への冒涜にならないかお伺いをたてに行き、それもまた神の御心に かなうとお墨付きを頂いたとか、フランスで日本色丸出しのアニメめぞん一刻が 大人気だったというのを読むと、理屈ぬきに楽しくて堪らないのですよ。 著者はデジタルハリウッドの学長さんだったりするので、そういう世界に広がる オタク文化をビジネスや産業と絡めて解説されてもいます。

9位
シュリーマン旅行記 清国・日本
シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))
トロイの木馬で今日でのも有名なトロイアの遺跡を発見したシュリーマンはみなさんご存知でしょう。 しかし、彼が日本へ来ていたことを知る人は意外と少ないようです。もちろん自分も知りませんでした。^^  タイトルからも分るように、この本の1/3は清国(万里の長城や上海など)に割いてます。 しかし、残りの全てがあのシュリーマンが書いた日本見聞録。それだけでもう必読ものでしょ。 amazon顧客リビューのずらっと並んだ高評価ぶりを見て頂ければ自分が言う事は何も無いです。

10位
誰も書かなかったイラク自衛隊の真実―人道復興支援2年半の軌跡
誰も書かなかったイラク自衛隊の真実―人道復興支援2年半の軌跡
amazon内容紹介 : イラクと日本で何があったのか!最も危険をともなう撤収は、いかに行われたか?なぜ、一人の殉職者も出さずにすんだのか?10次、5500人にわたる自衛隊史上最大の任務―その人間ドラマと緊迫のドキュメント。
当時のマスコミ報道は本当に酷かった。今でも大して変わらないですけどね。^^ だから、自衛隊の活動は実際の所はどうだったの?という方には是非読んで貰いたい。