2006年07月22日

小説 海辺のカフカ

元ネタ washingtonpost.com 書評

KAFKA ON THE SHORE
海辺のカフカ

もし日本で奇妙な事が起こっているとしたら、きっとそれは村上春樹の新しい小説に違いない。アメリカのお気に入りの日本人小説家が匿名で出版したとしても、彼のファンは即座に彼の作品だと見分けるだろう。そして、まだ彼のファンではない初めての読者にとって海辺のカフカは、何故彼がここアメリカと彼の故国日本で共に正当に有名なのかという事の優れた証明です。
村上春樹は、読む事が本当に楽しい神秘的、哲学的でポストモダンなフィクションを創作します。彼は、よりシリアスなトム・ロビンスであり、それほど難解ではないトーマス・ピンチョンだ。

それらの二人の様に、彼は高い文化とそうでない文化を(特に我々のものを)ミックスします。彼の小説の内の2冊は西洋のポップソングの名前から名づけられているし(ダンス・ダンス・ダンス、ノルウェイの森)、彼の小説の登場人物達は、黒澤のものよりトリュフォーの映画をよく観ていそうだ。
この新しい小説で登場人物達は時折、源氏物語や夏目漱石の小説について議論するかもしれませんが、彼らに影響を与えているのは、プラトンやソフォクレース、そしてタイトルが示す通りフランツ・カフカです。

この小説を馬鹿にすることは簡単そうです。しゃべる猫、突然の魚とヒルの豪雨、高松の裏通りでポン引きをしているカーネルサンダーズの姿をした幽霊、ジョニーウォーカーウィスキーの肖像の仮装をして魔笛の為に猫の魂を集めている登場人物、アンリ・ベルグソンとヘーゲルを引用する豪華な売春婦、そして、別次元への「入り口の石」。
この小説を重苦しくさせるのも同様に簡単です。ギリシアの悲劇に関する多くの議論、性の起源についてのプラトンの神話、宿命、いろいろな形而上学的システム、音楽学、象徴性と比喩の性質、ブッダと道の教えと第二次世界大戦の間に行われる残虐行為の容赦の無い記憶。
まさに素晴らしい事は、それらのバラバラな材料から知的で意味深いのに「インディ・ジョーンズの映画か何かのようだ」と感じる1冊の小説を村上が作り上げ事だ。

例えば。
この小説は、章ごとで交互に語られる2つの平行した物語から成ります。

物語の1つは、田村”カフカ”という名の明るいが不幸な15歳の少年を主役にしています。---彼は名前の一部を借用した。彼が自分の作り話が好きだからだが、”カフカ”はチェコ語で”カラス”という意味でもあるからだ。---彼は、父を殺し母と寝てしまうというエディプスさながらの不吉な予感に囚われ、家から逃げ出す。(母は4歳の時に彼を捨てた、そしてそれ以来、彼は母もしくは姉とは一度もあっていない。)彼は東京を離れ南の島四国へ向かう。そして、多くの時間を彼の母となるのに十分な年齢の優雅で神秘的な女性サエキと、”性別のハッキリしない血友病患者”で21歳の大島が運営する私設図書館で過ごす。それらの二人は共に、この逃亡者(カフカ)が自分自身を見つけ出し、彼の暗い運命を受け入れるのを助けていく役割を果たします。

もう1つの物語は、子供の頃、第二次世界大戦の間に記憶を消され、知的成長を妨げられるという不可解な体験を受けた、中田サトルという名の知能の遅れた文盲の60台の男を取り扱っている。その損傷の代償としてか、彼は猫と交信したり天気をコントロールする能力を持っている。(彼こそが、アノ奇妙な豪雨の責任者だ。)彼は猫の魂コレクターと深くかかわりあってしまい、止むを得ず東京から逃げ出す行動を起こす。
彼はホシノという(この老人を助けると承諾した)トラック運転手と仲間になる。
---アロハシャツとレイバンと中日の野球帽を愛用する普通の男だ---
中田が開閉しなければならない「入り口の石」を求めるという一種の難解な冒険の為に、彼らもまた四国へ向かった。他の登場人物が言う様に、(これはとても気取った文章だ、しばしばそれ自体を批評している)それは、「フィルムノワールSF映画を」。

ある面で、この小説は15歳の少年が大人の世界へ入って行く際の通過儀礼の話だが、より大きな面でそれは、私達ひとりひとりが自己の完成の為、魂の仲間を探し求める(”シンポジウム”で声に出して大島がカフカと読者に説明したように)プラトンの概念上での瞑想の話だ。

ホシノは中田の中に魂の仲間を見つける。それは、仏陀の愚かでも熱心な弟子の事を彼に思い出させますが、最愛の祖父の代わりも果たします。

カフカはサエキさんの中に魂の仲間を見つける。それは、現在の彼女と彼女がかつてそうだった15歳の女の子としてカフカの夢の中へ共に現れます。そして、カフカと中田は決して出会わないけれども、彼らの平行した行動は霊的な次元で互いを補います。

このテーマとエディプス神話に関する村上の解釈は、大胆に独創的で否応なしに面白く読めるものです。フィリップ・ガブリエルの素晴らしく流暢な翻訳がそれを可能にしています。
海辺のカフカは、心から推奨します。
あなたの猫に読んであげて下さい。

Reviewed by Steven Moore
Sunday, January 30, 2005; Page BW06

posted by えいち at 01:04 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | Novel/Books(小説・本)
この記事へのコメント
  1. くそっ
    プロだから当たり前かもしれないが、日本人の俺より読み込んでやがる・・・
    Posted by at 2009年07月14日 02:38
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雑記ですから

08/03/22

ブログの参考にしてる面白い本ランキング。

1位
オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史
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外人さんがアニメを中心とした日本のオタク文化を本にしたものは珍しくなく なってきましたが、その中でもこの本はダントツで理屈抜きに面白い。 何が良いって、著者のパトリック・マシアスが、アメリカで育った本物の ギークだって事に尽きる。子供の頃から、ゴジラやウルトラマンなどの特撮や バトル・オブ・プラネット(ガッチャマン)やスター・ブレーザーズ(宇宙戦艦 ヤマト)に夢中になり、アメリカのTV会社のいい加減さに翻弄されながらも、 オタクであり続けた記録が、微笑ましいやら楽しいやらで最高です。 内容にちょっと触れると、黒人やヒスパニックの危ないお兄さん達がドラゴン ボールのアニメTシャツを着てたりとか、リン・ミンメイにアメリカの少年たちが 「デカルチャー」しちゃったり、ガッチャマンのパンチラシーンで性に目覚め ちゃったり、ガンダムWでアメリカの十代の少女たちがヤオイに走ったりとか、 もう興味がない人にはどうでもいい話ばかりなんですが、ファンには溜まらない ネタのオンパレードで一気に最後まで読ませる魅力がある、というか魅力が溢れ まくってます。
自分が知る限り、彼以外のオタク本を書いてる外人さんは、アニメを楽しんでると いうよりも評論しているので、どうも上から目線の様に感じてしまいます。 スーザン・ネイピアさんの本を読んだ時も、そんな印象を受けましたよ。 日本を良く研究されていて、あ〜そういう考え方もあるのかあと、感心する一方、 彼女には、アニメに対しての答えが既に出ていて、その持論を補強するためのアニメ だけを例に挙げるので、ちょっとそれは違うんじゃないかと反発したくなる。 翻ってマシアスは、アニメを見る目線が自分とほぼ同じなので、共感できるんですよ。 ただ単純にアニメや漫画を楽しんで感じたままを書き連ねてる。学術的には価値が無い のかもしれませんが、自分にとっては凄く価値のある本だったりします。

2位
「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)
「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)
図書館で借り直してまた読んでみた。
やっぱり面白い。
地球の裏側にある全くの異文化で育った人の感想や考え方って、日本人には 想像できないような意外性があるし、普段は気にもしなかった事を指摘されると あ〜確かにそうだなと思わず納得させられる。 この作者のコリン・ジョイス氏のように10年以上日本で暮らし日本語がペラペラ になったイギリス人が、日本語の巧みな言い回しや表現・ユーモアに感心し楽しん でいると書いているのを読むと、単純に嬉しいし興味深い。 コリンさんは「猿も木から落ちる」という諺がかなり気に入った模様。 英語での「Nobody is perfect」なんて足元にも及ばないと言ってます。 この方は、ニューズウィーク日本版の記者を経て今はイギリスの高級日刊氏 テレグラフの東京特派員をしてるのですが、日本で「全米が泣いた」というフレーズ が流行った時は、それを記事にして送ろうとしたほど気に入ったそうです。 残念ながら、他の記者に先を越されてしまったようですが、まさか「全米が泣いた」 が既にイギリスで紹介されてるとは意外というか、そんな重要性が低い記事も 書いてるのかとちょっとビックリ。
他にも、プールに日本社会の縮図を見ちゃったり、美味しいけど味がどれも変わらない日本のビールにガッカリしたり、イギリスは紳士の国と言われて驚いたりと色々な面白エピソードが満載でした。 この面白さの半分でも見習いたんもんです。^^;

3位
中国動漫新人類 (NB online books)
中国動漫新人類 (NB online books)
目からウロコが落ちました。ボロボロって。 この本の趣旨の一つに「反日で暴れる中国人がどうして日本のアニメや漫画を楽し んでいるのか?」を考察するというものがあるんですが、正に自分が常々知りたいと 思っていた事なので、本当に楽しんで読めました。 著者は中国で生まれた日本人であり、大学で中国からの留学生を教えていたりもして るので、彼らの生の声を通訳など通さずにそのまま文章にされている所が魅力です。 スラムダンクが中国でもの凄いバスケブームを起こしたり、大人気のクレヨンしん ちゃんをパクッた中国アニメが中国人の小さな子供にも馬鹿にされてたりとかも 面白いネタだったんでが、コスプレイベントが中国の国家事業として企画されている という事実にビックリ。もちろん、何で反日教育をしてる中国政府が、日本アニメ 大好きの若者が日本のアニメキャラに扮するコスプレを自ら開催するのかという理由 も、著者なりに一つの解を示してくれています。他にもアメリカで起きた反日運動の 裏側など、アニメ以外の話題にも触れており読みごたえ十分な内容でした。 管理人同様、今の中国はどうなってんの?と思ってる人は是非読んでみて下さい。

4位
世界の日本人ジョーク集
世界の日本人ジョーク集 (中公新書ラクレ)
内容はタイトルのまんまで、世界中の日本人を扱ったジョークを集めて紹介しながら 著者の海外経験を通して海外の人が持つ日本人の印象や実態とは少し違う固定観念などを面白おかしく、時には真面目に語ってくれます。 著者はルーマニアに2年間在住しており、その時に「キネーズ(中国人)!」とほぼ 毎日声をかけられたそうです。親しくなったルーマニアの友人に、何故東洋人を見かけ ると中国人だと言うのかと聞くと、「あの豊かで優秀な日本人がこんなルーマニアなん かに来るわけがない。中国人に違いない。って思うんだよ。距離感が違いすぎるんだ。 日本はずっと上過ぎてね。」と言われたとか。リップサービスを差し引くとしても 他のルーマニア人にも同様の意見が多かったと述べてます。 何か読んでてこそばゆくなってきますが、こんなのもあります。 アメリカが日本人を動物に例えると何かというアンケートが実施されて、一番多かった 答えが「FOX(狐)」だったとか。どうやら「ずるい、ずる賢い」という意味だそうですが、狡猾・卑怯者ぐらいに思ってるのかもしれませんね。 真珠湾から安保のただ乗り(と向こうは思ってる)、湾岸戦争でのお金のみの貢献に 日米貿易摩擦あたりでこういう印象になってるそうです。 とまあ、こんな風にちょっと顔をしかめたくなるようネタも載ってます。
全体的には面白い内容のネタが多いし、巻末の辺りでは世界中で愛されるアニメや 漫画のジョークもあったりするので、ここの読者さんならかなり楽しめると思います。 この本が話題になった頃は、よく2ちゃんねるでもこの本に載ってるジョークがコピペ されてたので、あーこれがネタ元かあと膝を打つ人もいるでしょう。 単純な面白さで言うと前回紹介した「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート よりも上だと思う。まあジョーク集だから当たり前なんだけど。^^;

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私の部下はイギリス人―アングロサクソンが世界を牛耳っているわけ
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これは面白かったというよりも先に、はあぁ〜とため息が出た。 ある程度分かっていたとはいえ、現地で何十年も働いた人から人種差別の実情を 語られると重みが違う。ほんと彼らは有色人種を差別することが骨の髄まで染み 付いてるというか、遺伝子に書き込まれてるんじゃないかって感じですよ。 しかし、その差別も年代によって少し様子が違うという所にイギリスの歴史が 垣間見えて興味深かったです。 著者はある日本の電気メーカーの現地法人社長をされてたのですが、イギリス人 社員のくせもの振りに随分と辛酸をなめさせられたようです。日本人の常識から すると、キチ○イ認定されそうな人が普通にゴロゴロいるってのが凄いですよ。 性善説で動くと悉く失敗し、自らのお人よしぶりを痛感させられたとありますから。 ほんと改めてイギリス人てこんな人間なのか、イギリスってこんな国なのかと 驚かされました。テレビなどで英国に良いイメージしか持ってない人にはかなり ショックな内容かしれません。 本筋の現地オフィス関連の苦労話は文句なしに面白かったですが、少し話しが それる部分はちょっと退屈だったかも。
とにかく良い意味でも悪い意味でも心に残るネタが多かったです。 ビジネス書ではなくエッセイなので、そういう問題に対処する方法が詳細に書いて ある訳ではないですが、英国の負の部分を実体験に基づいて書かれた本は意外と 少ないと思うので、是非一読してみて下さい。

7位
僕、トーキョーの味方です アメリカ人哲学者が日本に魅せられる理由
僕、トーキョーの味方です アメリカ人哲学者が日本に魅せられる理由
これで4回ぐらい読んだと思うけど、いつも読後に妙な気分になる。 面白かったーと喜んだり、何じゃこれと失望したりという激しい感情じゃなくて、 慣れ親しんだ東京の話のはずなのに、何か知らない別の街を題材にしたおとぎ話を 聞かされたような、まったりした感じ。 きっとこれが、哲学者だという著者のマイケル・ブロンコが書く文章の力だね。 普通の外人さんと違い、異文化に驚くだけで終わらず、そこに哲学者らしい解釈を ちょぴり詩的に加えてるのが印象的だった。 大袈裟に褒める訳でもなく、手厳しく批判するでもなく、彼独特の言い回しで東京 の一部を切り取ったエッセイの集合を、退屈と感じる人もいるかもしれないけど、 自分にとっては、味わった事のない感慨を与えくれる貴重な本です。 ま、そんな曖昧な紹介はこの辺にして内容に少し触れると、著者は宅配便の便利さ にいたく感銘した模様。ほとんど奇跡だとまで言ってます。^^ 日本人にしたら当たり前の事だけど海外では違うんですかね? 面白かったのは、やっぱりTシャツのなんちゃって英語は最初凄く気になったみたい ですよ。女性が胸の位置に「ロッキー山脈」とか「天国の門」とかプリントされた Tシャツを着てると思わず視線が胸に吸い込まれると言ってます。^^ まあこれは定番ネタですね。でも彼の場合は、呆れるだけで終わらずそこで哲学 しているのが売りです。

8位
クール・ジャパン 世界が買いたがる日本
クール・ジャパン 世界が買いたがる日本
これはもうタイトル勝ちというか、日本人なら思わず手に取りたくなるでしょ。^^ でも、ちゃんと中身も充実してますから問題無しです。 2年ほど前の本なので、内容に新鮮味は欠けてますが、ホンダが二足歩行ロボットを 創る際、法王に神への冒涜にならないかお伺いをたてに行き、それもまた神の御心に かなうとお墨付きを頂いたとか、フランスで日本色丸出しのアニメめぞん一刻が 大人気だったというのを読むと、理屈ぬきに楽しくて堪らないのですよ。 著者はデジタルハリウッドの学長さんだったりするので、そういう世界に広がる オタク文化をビジネスや産業と絡めて解説されてもいます。

9位
シュリーマン旅行記 清国・日本
シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))
トロイの木馬で今日でのも有名なトロイアの遺跡を発見したシュリーマンはみなさんご存知でしょう。 しかし、彼が日本へ来ていたことを知る人は意外と少ないようです。もちろん自分も知りませんでした。^^  タイトルからも分るように、この本の1/3は清国(万里の長城や上海など)に割いてます。 しかし、残りの全てがあのシュリーマンが書いた日本見聞録。それだけでもう必読ものでしょ。 amazon顧客リビューのずらっと並んだ高評価ぶりを見て頂ければ自分が言う事は何も無いです。

10位
誰も書かなかったイラク自衛隊の真実―人道復興支援2年半の軌跡
誰も書かなかったイラク自衛隊の真実―人道復興支援2年半の軌跡
amazon内容紹介 : イラクと日本で何があったのか!最も危険をともなう撤収は、いかに行われたか?なぜ、一人の殉職者も出さずにすんだのか?10次、5500人にわたる自衛隊史上最大の任務―その人間ドラマと緊迫のドキュメント。
当時のマスコミ報道は本当に酷かった。今でも大して変わらないですけどね。^^ だから、自衛隊の活動は実際の所はどうだったの?という方には是非読んで貰いたい。